リカレント教育(社会人の学び直し)ってなんだろう?

アイキャッチ リカレント教育ってなんだろう?

最近テレビや新聞で「リカレント教育」という言葉を見聞きすることが多くなったと思いますが、正直よく意味が分かっていない人も多いのではないでしょうか?

「大人が勉強することでしょう?」
「自己啓発系のセミナー?」
「ぶっちゃけキャリア研修との違いがわからない。」

大丈夫です。きっとわかってない人の方が多いですし、筆者が調べてみても「あ~これはほとんど情報が整理されていなくて、読んでも難しいな」と思いましたから。分からないのはあなたのせいではありません。(散らかったまま情報発信する方が悪いんです。)

今回は筆者が分からないなりに一から調べて理解した「リカレント教育」について一生懸命アウトプットさせてもらいます。

目次

リカレント教育とは

リカレント教育とはシンプルに表現すると、高校や大学を卒業して社会に出た後、再び教育を受ける(繰り返し教育を受ける)ことです。言い換えると「社会人の学び直し」です。
主に大人が対象で、職業上のスキルアップやキャリアアップ・キャリアチェンジを目的としています。

なぜ今リカレント教育なのか?

近年グローバル化やテクノロジーの進化が凄まじいことはみなさんにも周知の事実だと思います。
今はただのニュースでしかないAI、5G、ブロックチェーン、NFT、メタバース、量子コンピュータなどといった最新テクノロジーが将来的には私たちの日常生活や仕事に入り込んでくる可能性が大いに考えられます。
また日本国内の人口縮小が進むことの対策として、海外から人を集める政策や海外へビジネスチャンスを求める動きもより活発になるでしょう。
要するに、今の社会は以前にも増して社会的・経済的環境変化に対応することが求められるようになっているんです。
このような事情から、学校を卒業した後、新しい知識やスキルを身に着けるリカレント教育に注目が集まっています。

リカレント教育と生涯学習の違いは?

リカレント教育と生涯学習はどちらも大人が学ぶという意味では同じですが、学ぶ目的が異なります。

リカレント教育

社会で働いていた人が、職業能力の向上を目的に再び教育や訓練を受けること

生涯学習

仕事とは無関係に、個人の自己実現や趣味、つまりは「自分の興味があること」を自発的に学習すること

リカレント教育の種類

リカレント教育の種類は大きく3つあります。

  1. 大学や専門学校などの高等教育機関で提供されるリカレント教育プログラム
  2. 官公庁が提供する研修・セミナー・職業訓練
  3. 企業が提供する研修・セミナー・職業訓練

1.大学や専門学校などの高等教育機関で提供されるリカレント教育プログラム

大学や専門学校の中には社会人を対象とした教育プログラムを導入しているところがあります。社会人を対象としているので、学生の講義と比べて、実務やキャリアアップに活かせるカリキュラムとなっています。
受講スタイルは授業形式、通信教育形式、オンライン形式など多岐にわたりますが、やはり教育機関でリカレント教育を受けるならリアル参加の授業形式がおすすめです。
勉強するための設備が整った環境で、各分野で活躍している講師から学ぶことができます。
プログラム参加者は在学者専用の図書館やカフェなどが利用できる特典もあります。

2.官公庁が提供する研修・セミナー・職業訓練

地域によっては官公庁が主体となってリカレント教育を開催している場合があります。
例えば東京都ではリカレント教育の専用サイトを運営して、仕事に必要なスキルアップやキャリアチェンジを後押ししています。
サイトでは有名講師陣によるミニッツ動画や、募集中の講座を閲覧することができます。

東京都主催の講義だけでなく大学主催のものもあり、さまざまな専門分野の講義にオンラインで参加できます。

他にも公的な支援制度として、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを職業訓練校で習得する「ハロートレーニング(公的職業訓練)」があります。
事務、IT、建設・製造、介護、デザイン、Web設計など様々な訓練コースがあり、受講料は原則無料。訓練中も訓練後も、ハローワークで就職サポートが受けられます。

3.企業が提供する研修・セミナー・職業訓練

企業が社員のスキルアップや能力開発を目的として、研修プログラムやトレーニングプログラムを提供している場合があります。
企業が主体的にリカレント教育を導入しているので、会社としてどのような人材が欲しいのか?ある意味明確なので、「企業が提供しているリカレント教育プログラム=会社として欲しい人材像」ですから、より職業上のスキル向上やキャリアアップに直結しやすいことがメリットです。
また企業公認なので、長期休暇制度や助成金などによるサポートも期待できます。

リカレント教育の現状

日本ではリカレント教育は比較的新しいものであり、大学や専門学校でのリカレント教育プログラムの数もリカレント教育を推奨する企業数もまだまだ少ない状況です。

平成30年度 年次経済財政報告(内閣府)によれば、25~64歳のうち大学等の機関で教育を受けている者の割合をOECD諸国で比較すると、日本の割合は2.4%と、英国の16%、アメリカの14%、OECD平均の11%と比較して大きく下回っており、データが利用可能な28か国中で最も低い水準となっています。

学び直しの国際比較
出典 平成30年度 年次経済財政報告(内閣府) https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02023.pdf

イギリスでは社会人教育に、約140億円を投入

社会人の学び直しが浸透しているイギリスは、働きながら夜間や週末に学ぶパートタイムの就労形態が浸透していて、多くの大学で専用のプログラムが設けられています。
パートタイム修学を基本とする公開大学はなんと1971年に開学していて、世界の遠隔高等教育機関の先駆けとなっています。

コロナ禍では雇用機会が減った受けたことを受けて、約140億円の追加予算を投じて、テクノロジーやヘルスケアなど近年需要の高い分野の教育プログラムを無料で提供するなど、社会人が学び直す機会を積極的に提供しています。

リカレント教育の課題

日本でリカレント教育が浸透していない背景はいくつか考えられます。

  • リカレント教育が浸透していない
    日本ではまだまだリカレント教育という考えやその必要性について十分認識されていないことが原因として挙げられます。
    さらになぜリカレント教育が認識されないのか?といえば、OECD諸国と比較してリカレント教育を提供している教育期間が少ないこと、企業側でリカレント教育を推奨する活動がまだまだ少ないことが原因と考えられます。
  • 費用が高い
    リカレント教育はその受講料はもちろん交通費や教材費などがかかることが利用者のハードルになっていると考えられます。先に述べた通り、日本ではまだまだリカレント教育が浸透していないこともあり、需要が少ないため、プログラムを提供する供給側も費用を高くしなければならないという悪循環になっていることが想像されます。
  • 雇用主側の理解が得られない
    金銭的な問題が解決できても、雇用主側の理解が得られないという問題があります。学び直しのために仕事を早く切り上げなければならないが、職場から迷惑がられたり、苦労して知識やスキルを習得しても給与アップなどのイメージが沸かなかったりするため、対価が少ない、意味がないと感じる人が多いです。

リカレント教育に関する支援制度

まだまだ課題が多い日本のリカレント教育ですが、近年政府がリカレント教育に注力するようになったため、助成金や税制優遇措置などの支援制度が整備されつつあります。

教育訓練給付金

労働者が職業能力の向上のために教育訓練を受講する際に、訓練費用の一部を助成する制度です。厚生労働大臣が指定する職業訓練校等において受講した場合、自ら負担した受講費用の20%~70%の支給が受けられます。

高等職業訓練促進給付金

ひとり親の方が看護師等の国家資格やデジタル分野等の民間資格の取得を目指して修業する期間の生活費を支援する制度です。
支援対象者になると、訓練期間中、月額10万円(住民税課税世帯は月額70,500円)の支給を受けることができます。

対象者

訓練開始日以降、次のどちらにも該当するひとり親の方

  1. 児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準(※1)にある方
    ※1 例:お子さんが1人の場合、1年間の収入が365万円未満
  2. 養成機関において6月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得等が見込まれる方
支給内容
  • 訓練期間中、月額10万円(住民税課税世帯は月額70,500円)
    ※訓練を受けている期間の最後の1年間は支給額を4万円増額
  • 訓練修了後、5万円を支給(住民税課税世帯は25,000円)
対象資格

 就職の際に有利となる資格(※2)で、養成機関において6月以上修業するもの
(例)看護師、准看護師、保育士、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、調理師、製菓衛生師等の国家資格や、シスコシステムズ認定資格、LPI認定資格等のデジタル分野等の民間資格
※2 教育訓練給付の対象講座を受講して取得する資格(一部を除く)など

公的職業訓練(ハロートレーニング)

希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを無料で習得することができます。
雇用保険の対象となっていない方でも、一定の条件のもとで、月額10万円の支給を受けながら訓練を受けることができます。

人材開発支援助成金

事業主が従業員に対して職務に関連した訓練を実施した場合や、新たに教育訓練休暇制度を導入して、教育訓練休暇を与えた場合に、訓練経費や制度導入経費等を助成する制度です。

企業からすると従業員のスキルアップのための費用を助成してもらえるので、コスト削減につながりますし、従業員のやる気向上にもつながって一石二鳥な制度といえます。

企業によっては、修学にかかる期間を休暇とすることができたり、進学や留学にかかる費用をサポートするなど、より手厚い制度を整えているところが徐々に増えてきています。

時代に取り残されないように継続的にスキルと知識をアップデートしよう!

日本では高齢化が進んでいることもあり、一昔前よりも長く現役として働く必要が出てきています。加えてDXなどのテクノロジーの進化とグローバル化によって、必要とされるスキルの移り変わりも早くなっています。
このような時代の中で活躍し続けるためには、社会人になった後も自分自身のスキルや知識を更新し続けていくことが重要です。

最後に大人の学び直しを支援するポータルサイトを紹介します。

マナパス(文部科学省事業 開設・運営)

社会人の学びに関する情報が幅広くまとめられています。

  • 約5,000の大学・専門学校等の条件別講座検索
  • 自分の学習モデルを見つける修了生インタビュー
  • 費用支援や職種別の学び直しを紹介する特集ページ等
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